yatohikoのブログ【酒と泪と男と???】

まあ日々の徒然ってことです・・・

平然と生きている

友人に勧められて読みました。

 

椿山課長の七日間 浅田次郎集英社文庫)

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ストーリーの真ん中くらいまでは、「死ぬことだけが、愛する者たちの平安につながる。」なんて寂しすぎるストーリーだなと感じ、どんな結末に収束していくのかなと。

最終章の手前で、バラバラだった関係者がひとつに収束していく。

王妃の館も同じようなプロットでしたね。何となく結末が読めた・・・って思っていたのが浅はかでした。
主人公のお父さんが、登場人物の事情を背負って地獄に向かっていく時、亡くなった奥さんへの思いをカア坊(主人公)に伝えている場面が心にしみる。


 
 カア坊。母さんに伝えてくれないか。
 いつか向こうで会えたなら、手をついて謝るつもりだったのだが、とうさんのわがままでそれすらもできなくなってしまった。
 自分の近しい人から幸せにしていくのが、人間としての道理だと思う。だが俺は、その道理がどうしてもできなかった。
 戦では多くの部下を死なせた。シベリアの雪の中で見殺しにしてしまった。そんな俺が、愛していると言うだけの理由で、家族だと言うだけの理由で、誰にも先んじておまえを幸せにすることが出来ると思うか。
 心から愛するお前に、ただの一度も愛の言葉をかけなかったわけはそれなんだ。愛していると口にすれば、俺はその言葉の責任において、お前を誰よりも幸せにしなければならなかったからだ。
 本当は愛していると言いたかった。向こうで会えたなら、その時こそ声を限りに、百回も、千回も、一万回、百万回も、その言葉を口にしかった。

 

ちょっと観点が違うかもしれないけど、大人の流儀(伊集院静)に出てくる
「人はそれぞれ事情をかかえ、平然と生きている」という一文を連想しました。